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「香害」をご存知ですか?

化学的な香りに苦しむ私たち

「香害」とは、合成洗剤や柔軟剤・入浴剤・防虫剤・化粧品・香水・芳香剤などに含まれる人工的な合成香料が、頭痛、吐き気や咳・喘息、アレルギーを引き起こし、「化学物質過敏症」などの健康被害を生じさせることです。
香りの感じ方や嗜好には個人差があります。自分ではお気に入りの快適なにおいでも、香りが苦手で不快に感じる方にとっては、友人や同僚の服についた香りの影響で体調が優れずに学校や職場に行けなくなったということもあります。


「香り」で苦しんでいる方がいることを知ってください

化学物質過敏症は、人によって症状が異なり、広範囲の症状が現れることが特徴です。代表的な症状は、頭痛やめまい、吐き気、目や喉の痛み、倦怠感、脱力感などですが、はっきりと診断されるまでには時間がかかり、周囲から理解されずに苦しむ方も多い病気です。化学物質過敏症については、確実な治療方法や発症メカニズム、予防方法はまだ解明されていませんが、引き金となる化学物質にさらされないことは有効とされています。

最近ではウェブサイトやポスターで周知している行政機関や教育機関もありますが、化学物質過敏症で苦しんでいる方だけではなく、まだ発症していない方を守るためにも、「化学物質過敏症」への理解と公共の場での化学物質過敏症を誘発する様な人工的な合成香料(香水、芳香剤、香りの強い柔軟剤・整髪料等)の使用を控えるなど、周りの方々の配慮が必要です。いつ誰が発症するか分からない香害は現代の公害と言えるのかもしれません。

今回は日常生活でニオイによる体調不良で悩んでいる3名の方にお話を伺いました。

Q体調の違和感を感じ始めたのはいつ頃、どんな状況でしたか?
また、どのような症状でしたか?

Aさん(女性・40歳代)(以下敬称省略):昔から芳香剤や化粧品などのニオイは苦手で無香料のものを使っていましたが、3年ほど前に会社のビルの外壁塗装で3か月間ほど建物に幕が張られ社内は塗装のニオイがこもった状態でした。その頃から、頭痛や吐き気、めまいなどの症状が出始めました。コロナでアルコール消毒が日常になった去年の春、アルコールのニオイにも不調をきたすようになり体調不良で仕事を辞めました。

Bさん(女性・50歳代)(以下敬称省略):ある日職場にアロマデュフューザーが設置され、そこから出るニオイを毎日嗅ぐようになり体調不良の症状が出るようになりました。そしてその後、私と同じく不調を訴える同僚が何人も出てきました。

Cさん(女性・40歳代)(以下敬称省略):子どもの頃から、たばこや香水などのニオイが苦手でした。ただし、「苦手」というだけで、具合が悪くなるほどではなかったように思います。
頭痛などの症状が出始めたのは約3年前です。職場に新しく入ったスタッフ数人の香水や柔軟剤、ロッカーの芳香剤、ハンドクリームなどのニオイに毎日接するうちに、頭痛、目や喉の痛み、唇の皮むけなどが頻繁に起こるようになりました。そして、不調を上司に相談してみたものの理解を得られず、耐えられなくなり数か月後に退職しました。この頃は家から一歩外に出ると、行き交う人々や数十メートル先にいる人からの強烈な柔軟剤のニオイによって、ほとんど外出できなくなり、外出恐怖症と言っても過言ではない状態でした。部屋の窓を開けると、どこかの家の洗濯物からニオイが飛んでくるので、換気をするにも覚悟が必要になりました。昨年の秋からようやく仕事に出るようになりましたが、駅までの道、通勤電車、事務所、どこにいても様々な強烈なニオイが溢れているので、症状が出ない日はありません。

Q化学物質過敏症を自覚したきっかけはどのようなことでしたか?

A:10年前に母が化学物質過敏症だと診断されていたので、同じ症状が出たときに自分も化学物質過敏症を発症したのだと自覚しました。母の症状を知らなかったら発症に気付くのが遅れていたと思います。

B:SNSで『香害』『化学物質過敏症』の症状を訴えられている方の話を目にし、私もこれかな?と思いました。

C:SNSに症状を投稿したときに、知人から「私も」というコメントが届き「化学物質過敏症」という言葉を初めて知りました。

Q現在のニオイに対する体調などの状況はいかがですか?

A:仕事をしていたときは、通勤電車、社内の空間や周りの人の柔軟剤や芳香剤、消毒や防虫剤などあらゆるニオイに囲まれどんどん体調が悪くなっていました。仕事を辞め、今は自宅中心の生活をしているため、頭痛や吐き気、めまいなどの症状はほぼなくなりましたが、外出して柔軟剤や芳香剤、除菌消臭などに接触すると、軽い頭痛やめまいなどの症状はあります。

B:唇が腫れたような違和感や、口の中がピリピリした感じで苦痛を感じています。

C:つい最近、石油ストーブを使っている部屋に長い時間いると口の中が石油の味がするようになりました。今までは気にならなかった「食品の香料」にも反応するようになりました。 「今はマスクをしているから、そんなにニオイを感じないのでは?」とよく言われますが、そんなことはありません。マスクにニオイがついて離れず、かえって悪いような気もします。発症したことで、息を止める時間が長くなりました。ただし、息を止めていても、症状が出ることも多々あります。ニオイを感じるよりも先に、目や喉が痛くなったり、頭痛がしたりします。

Q生活上ではどのように対処していますか?

A:台所、トイレ、風呂場などで一般的な洗剤が使えなくなり、掃除には家中液体石鹸を、洗濯はマグネシウム洗剤を使うなど、身体に害がない自然な物を使用するようになりました。外出すると空気中に漂う柔軟剤や芳香剤などのニオイの成分が髪や皮膚、服に付くので、帰宅後はすぐお風呂に入り、洗う服はビニール袋に入れ、ニットやコートなど洗わない服はオゾンとプラズマ発生器を置いている専用の部屋に持って行き、干してニオイを消しています。ニオイが付くことは、会社や公共の場所では避けることが難しいので、そういう人や場所は可能な限り避けるようにしています。また、外からニオイを家に持ち込まないことや触れる機会を減らすようにしています。特効薬などはないので、規則正しい生活、シャワーでなく湯船に浸かるなど、自己免疫力を上げることで症状を改善しようと日々努力しています。

B:窓や玄関を開けると近所の洗濯物から柔軟剤や洗剤のニオイが入って来るので、朝一番に一瞬しか窓を開けないようにしています。
床や棚などにもマイクロカプセル※の蓄積があるのでこまめに掃除するように気をつけています。(※微小な粒子または液滴をコーティングし微小なカプセルに加工したもの。香り成分をマイクロカプセルに封じ込めることで香りが長続きするものを売りにした製品が多くなっている)炊事、洗濯、お風呂はすべて無香料石鹸のみを使用し、重曹やクエン酸などナチュラルな物で掃除をしています。外出時は、マスクに『ハッカ油』をスプレーしたり、のど飴をなめたりして誤魔化しています。帰宅時は、直ぐに着替え洗顔しています。そして、ミネラル水の除菌消臭水でうがいし、室内や全身にスプレーしています。

C:化粧品や洗濯用洗剤、お風呂関係は無香料の物に変えました。無香料であっても、成分そのもののニオイが苦手なこともあるため、買って使ってみてはまた買い替えを繰り返しています。会社や駅のトイレなどに設置してある薬用石鹸はニオイが手に残り体調が悪くなるため、シャボン玉石けんのハンドソープを常に持ち歩いて使っています。

Q日常生活での変化はありましたか?

A:劇場、映画館、コンサートなど、近くにどんな人が座るか分からず、席を移動できないようなところには行けなくなりました。

B:通勤時の朝の住宅街からは洗濯物の様々なニオイが漂ってきているので、そのようなところは速足で通り抜けています。

Q普段からどのようなことに気をつけていますか?

A:ニオイを家に持ち込まないことです。宅配便は配達員の方の柔軟剤などのニオイが箱にも付いていることがあるので、玄関先ではなく門扉で荷物を受け取り、外で開封して箱は捨て、中身だけを家の中に持ち込んでいます。

B:オーガニック食品や薬膳など食に気を配り、香料を必要としない自然なものを使う生活を心がけています。また、『香害』『化学物質過敏症』の情報を学んでいます。

Q周りにはどのように伝えていますか?

A:SNSを使って発信しています。どういうことに気を付けたら良いかを聞かれた方には、直接詳しく話をしています。

B:相手に自分の症状をしっかり伝え、香りの少ない席への移動をご理解いただいています。また、マイクロカプセルは、空気や海洋を汚染し生態系を破壊している。そして私たちは、汚染された野菜や魚などを食べていることなどマイクロカプセルの危険性についてSNSを使って情報共有や発信をしています。

C:はじめは「ニオイがダメなので、できれば控えてほしい」という言い方をしていましたが、それでは伝わらずただのワガママだと捉えられたり、軽く受け流されたりしたので、最近は「こういうものによってこういう症状が出て辛い」と具体的に伝えるようにしています。

Qまだまだ知られていない香害について、学校や会社、デパートなど、それぞれどのような取り組みが必要だと思いますか?今の社会への問題点などありますか?

A:今の生活の中で、化学物質と一切関わらずに生活することは難しいと思いますが、公共の場所、ホテルやデパートなどではできるだけニオイをさせないでほしいと思います。多くの方にとっていいニオイだったとしても、ニオイによって体調が悪くなる人もいるということを知ってほしいです。目に見えず理解してもらいにくいことなので、ニオイが苦手であるという「ヘルプマーク」があったらいいと思います。

B:給食エプロンの共有使用です。前の人が洗濯したエプロンの柔軟剤や洗剤の香りが強すぎて、洗濯しても取れないことがあります。また、公共の場での香水やアロマ、消臭剤の使用をやめてほしいです。飲食店では、オーガニックをうたっているお店にもかかわらず、店員さんの柔軟剤や香水のニオイが強すぎて、折角のお料理の味が台無しになってしまっていることがあります。

C:前の職場で退職に追い込まれた経験から、今の職場では1年以上我慢してきました。しかし、最近席替えがあり職場にいる間ずっと頭痛に悩まされるようになったので、思い切って上司に相談しました。すると、上司が真剣に話を聞いてくれて、すぐに部門長会議で取り上げてくれました。「おそらく誰も化学物質過敏症のことを知らないと思うから、まずは周知しよう」ということで、回覧用の資料を作成するように言われました。それからすぐに席替えもしてもらえ、職場で息ができる時間がずいぶん増えました。その後は「最近はどう?大丈夫?」「この前テレビで同じような症状の人の話をやっていてこういうことなのだなと思ったよ」など、気にかけてくれる人も増えてきました。
公共の場でなくても、不特定多数の人が行き来する場所での過分な合成香料やアロマの使用を控えてほしいと思います。天神地下街を例にとっても、息を止めていても苦しくなるほどの場所がたくさんあります。体臭や加齢臭、生乾き臭を誤魔化すためのニオイ付き柔軟剤の使用も問題です。有害だと知りながら商品を売っている大企業も問題ですし、それを黙認している政府も問題だと思います。

Q体調不良の原因不明が分からず苦しんでいる方や子どもさんに発症前のサインや伝えたいことはありますか?

A:事前のサインなどは難しいかもしれませんが、誰でもある日突然発症するかもしれません。友人に柔軟剤の使用をやめたら慢性的に続いていた頭痛がなくなった人もいます。CMでやっているから、国が認めた許容量内だから、身体に害はないということはありません。悪いものが蓄積すると、それを身体が処理できなくなり、ある日突然発症します。自分が発症しないために日用品を身体に害がないものに変えることが、ご自身や家族、私たち香害に苦しんでいる人、環境、みんなのためになるということを知ってほしいです。

B:絶対ではないかもしれませんが、小さな子どもの日常的な機嫌の悪さ、鼻水やくしゃみ、咳など原因が分からないときは香害を疑ってもいいかもしれません。

C:今は発症していない人でもいつ発症するか分からない恐ろしいものであることを伝えています。まだ他人事であるうちに、使用しないという選択をしてほしいです。

Q化学物質過敏症を経験した当事者として、社会に向けてお願いしたいことやメッセージはありますか?

A:目に見えないものなので気付いてもらうことは難しいですが、化学物質過敏症というものがあり、苦しんでいる人がいることを知ってほしいです。そして自分自身や家族、身近な人がある日突然発症する可能性があるので、日常的に使うものについて、もう一度見直してほしいと思います。

B:体臭は恥ずかしい、そしてその体臭をさらに強い臭いで隠すようなCMはやめてほしいです。柔軟剤の香りが長続きするのを売りにしている製品が多いですが、体調が悪くなる人がいることを知って欲しいです。

C:私の症状は(少なくとも今は)軽いほうですが、反応するものがどんどん増えてきています。我慢しても絶対に良くなることはありませんので、辛いときは勇気を出して誰かに相談してほしいです。また、もし誰かが「ニオイで辛い」という話をしてきたら、しっかりと耳を傾けてあげてほしいです。

「香害」は、聞きなじみがない言葉ですが、タバコの副流煙のように知らないうちに他人を苦しめてしまう「ニオイ」による公害です。
自分にとってお気に入りの柔軟剤や香水などの合成香料によるニオイが、知らないうちに誰かの害になり日常生活を苦しめていることがあります。
化学物質過敏症については、まだ解明されていないこともありますが、花粉症のようなアレルギー症状ととらえる専門家もおり、積み重なる「ニオイ(化学物質)」の影響で、ある日当然、身体に様々な不調を及ぼすことが多いようです。
年齢関係なく、誰でも発症する可能性があることを心に留めておきましょう。
目に見えないものによる影響だからこそ、ひとりひとりの思いやりや協力が「みんなが住みよい社会」の一歩となります。

当事者の3名の方からのインタビュー取材で香害による深刻な状況をリアルに把握できました。
取材のご協力ありがとうございました。












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