福岡大学医学部看護学科 看護学博士
西尾 美登里 さん
ケアメンは、「介護に積極的に取り組む男性」のことです。現在、介護する側の36%が男性と言われています。介護は、する側、される側どちらにもなり得る可能性があるのは周知の通りですが、「介護は女性がするもの」と思っている方が多くありませんか?まだまだそういった社会的風潮がある中で、実際に介護をしている男性の苦労、悩みなどを研究しています。介護虐待、無理心中などの事件を耳にすると、加害者のほとんどが男性で、なぜそんな悲しい事件を起こしてしまうのだろうか、という観点から研究を始めました。
看護師として14年半、医療現場で働いていました。その中で介護の現状や課題に気付き、国際共同研究(高水準の専門性を有する研究者や大学・研究機関などと共同で行っている研究プロジェクト)に参画したのですが、自分の知識不足を痛感。今までのように看護師をやりながらの研究では不十分だと限界を感じ、看護師を辞めて地域国際看護のある佐賀大学大学院に入学し、修士を取りました。大学院での研究が楽しくなってきちゃって(笑)。このまま博士までとろうと、九州大学大学院医学系学府保健学で博士を取りました。現在は福岡大学医学部看護学科で学生たちに教える傍ら、「男性看護者」をテーマに研究、社会貢献を行っています。
男性介護者向け料理教室・ケアメンズキッチンの様子
奥さんやお母さんが倒れた時、男性の皆さんはどうしますか?突然介護をすることになった男性介護者は、介護のやり方はもちろん、洗濯や買い物など家事のやり方が分からない、近所や地域との付き合いがない、という悩みを抱え、誰に相談すれば良いのか分からない…。そして孤立しSOSを出せなかった介護者が悲しい事件を起こしてしまうのです。
株式会社山口油屋福太郎(本社:福岡市)と共同で「ケアメンズキッチン」を開催しています。男性介護者向けの料理教室で、料理だけでなく、介護の悩み相談や情報交換ができる男性介護者同士の交流の場です。先日も開催しましたが、皆さん熱心でたくさんの質問が出ていました。同じ悩みを持つケアメン同志の集まりに大きな意味があり、孤立を防ぐ交流の場にしたいと思っています。
男性は仕事柄、社会的評価される事に慣れていますが、急に家庭や家事という評価されにくい立場に置かれることは、容易に受け入れられません。最近ではイクメン(育児)やカジメン(家事)などと言われる人も増えてきましたが、かじえもんさんのようなヒーローが出てきて男性の家庭内進出が進むといいのになと思いますね。
普段の移動は自転車です!どこにでも行きますよ。あとはジムにも通っています。そして体の調子が悪い時はためらわず病院で診てもらいます!
趣味は、「坂道巡り」で日本坂道学会の福岡支部の会員です。副会長はなんとタモリさんです(笑)。土地や坂の名前の由来などを紐解いていくことが好きですね。福岡は坂が少ないですけど、東京の鐙(あぶみ)坂が好きです。(牛があぶみを踏んばらないと登れない坂:諸説あり)
女性は社会に出ることが増え、男性が働きながら介護を担うケースは増えると思いますので、全国でのケアメンの普及、教育を行っていきたいです。その一つとして、高校生の息子やその友人に、『介護体験買い物ツアー』と称し、お母さんの下着や生理用品など買い物できるかを体験させてみたいです。中高生には難しいことでしょうが、若い時から介護を見据えた教育は絶対に必要ですから。
生活上の家事や介護、育児など、男性だけに負担を押し付ける、逆に女性だけに負担を押し付けるではお互い豊かになりません。お互いを尊重し、多様性を認め合う社会になるといいですね。それから、女性はもっと自立しなきゃダメだと思いますよ。自分が自立していたら人の足を引っ張りあったりしないですからね!
新しい分野を切り拓くことにはたくさんの苦労もあると思いますが、研究熱心な西尾さんのチャレンジ精神は近い将来ではなく今すぐ必要な情報です。男前な切り口と女性視点の思いはまさにジェンダーフリー!介護問題は誰にでもあり得ることとして老若男女問わず社会全体で考えていくべきことですね。
高校生の息子さんのケアメン育成中のお話など、専門家・女性・母の視点からの考えに刺激を受けました!!
福岡大学医学部看護学科 看護学博士 西尾 美登里 ●所在地:〒814-0180 福岡市城南区七隈七丁目45番1号 ●TEL:(092)801-1011 ●FAX:(092)865-5117 ●Mail:nisiomidori@adm.fukuoka-u.ac.jp