8020運動という言葉をご存知ですか?
20本の歯があればたいていの物は噛んで食べることに困らないというデータから、80歳になっても20本の自分の歯を保とうという健康目標です。
約30年前にこの目標が立てられましたが、当時の達成率は5%ほどでした。
しかし、最近の調査では、すでに50%以上の方が達成しており、大きく進歩しています。
その反面、多くの歯が残っているご高齢の方がいるということは、むし歯になる可能性のある方も増加したということになります。
しっかり歯磨きができている時は良いのですが、手が思うように動かなくなりこれまでのような歯磨きができなくなったり、唾液が出なくなったりすると、一気にむし歯のリスクが高くなり、せっかく良い歯で高齢期を迎えた方が、むし歯で悩むことになってしまうのです。
「口腔ケア」とは、口の中を清潔に保つことで、口腔内だけでなく身体全体の健康を保つことにつながるケアのことです。
口腔機能の低下は、「噛んで味わう」「飲み込む」といった動作をスムーズに行えなくなり、十分な栄養が摂取できなくなります。
栄養不足が続くと、運動機能の低下や認知症の進行、さらには要介護の状態につながる可能性があります。
口腔ケアは、歯磨きやうがいでむし歯や歯周病などを予防するだけでなく、口臭の改善や発音機能の向上、誤嚥性肺炎の予防といった、高齢者の身体機能の回復につながります。
口腔ケアを適切に行えば、「おいしく食べる」という生きがいを高齢者が取り戻せるばかりか、介護側の負担を軽減させることになるのです。
自分で十分なケアができない場合には、椅子に座り、ベッドでは上体を起こしてケアします。
上体を「起こすことが難しい場合は、横を向いてもらいましょう(側臥位)。
麻痺がある場合には、麻痺している側を上にしたほうがより安全に ケアできます。
誤嚥が疑われる場合は水の使用を最小限にし、口腔ケア用のウエットティッシュを使います。
また入れ歯の方は、水道水でやわらかい歯ブラシや義歯ブラシを使ってできるだけ毎食後洗いましょう。
入れ歯を洗うときには、入れ歯にこまかな傷を付けますので、歯磨き粉は使わないで下さい。
義歯洗浄剤は週1回程度で、使用後は充分に洗い流してから口に戻します。
歯石(入れ歯にもつきます)については、歯科医で取ってもらいましょう。
そして飲み込む力が弱い小さなお子さんと65歳以上の方は、窒息、とくに餅をのどに詰まらせる場合が多く見られますので飲み込む力にも注意が必要です。
飲み込みを改善する練習法もありますので、歯科医や耳鼻科医などにご相談下さい。
加齢により噛む力や飲み込む力が衰えることは仕方ないことですが、歯や口腔環境は、正しいケアによって健康に保つことができます。
他人に口の中を見られたり触られたりすることに抵抗感を覚え、口腔ケアを拒否する方もいますが、そのような場合は、無理強いするのではなく、段階を踏んで少しずつ口腔ケアに慣れてもらいましょう。
口腔機能が回復すると、食べる楽しみや味覚が戻り、心と体の健康にもつながります。
高齢者の生活の質を向上させ、いつまでも元気で自分らしい生活を送っていきましょう。